嘘の息子覚書控え

本家の控え

2019-02-16

南條範夫の『わが恋せし淀君』、最近の「小説家になろう」でも人気ジャンルとされている転移ものと見なして、要所を抜き出してみる。淀君を思いながら大阪城の石垣を抜けて、刃傷沙汰の現場で犯人と勘違いされ、予知能力を持つ切支丹を装って城の要職に取り入り、古風な顔立ちを活かして城の女たちと懇ろになり、やがて念願かなって淀君のお気に入りに。その後、色々ありつつも歴史は変わらず、一度は現代に戻るも、(過去で過ごしたのと同じ期間である)七ヶ月間の不在を複数の犯罪事件に関与したものと疑われ、終幕へ。
「そして、その翌朝──
 伯母は、誠之助のベッドが殻になっているのを発見した。」
「伯母の多くの涙にもかかわらず、誠之助の消息は、それっきり、今もって、わからない。」
広義での異世界転移ものとしては知名度が低いからか、話題になっているのを見かけたことがなかったけれど、見事な筋立て。

「昔ミュージシャンの元彼と同棲してた時期、彼氏のバイト中に家でMIDIのデータの手直しをしておいたので、彼氏が帰ってきたときに「あなたお帰りなさい、お風呂にする?ご飯にする?それともProtoolsのデータ確認する?」は言ったことあります」