嘘の息子覚書控え

本家の控え

2019-05-16

樋口有介『平凡な革命家の食卓』(祥伝社)1600円+税
自宅で倒れた市会議員の死を巡って、警察と一般市民の思惑が入り乱れるミステリー……と思いきや、終盤に背筋が寒くなる一捻りが待っていた。序盤は勝手がつかめず、柚木草平シリーズのレギュラーキャラクターでもある山川六助が登場した辺りから面白くなってきて、メガネの言動を読み返したくなるような一捻りが不気味で良い。「ヤングジャンプ」で連載中の、藤崎竜が描いている『銀河英雄伝説』を誰かが評して、「他のキャラと違って、意図的に内面が伏せられているので、ヤン・ウェンリーの不気味さがいや増している」(大意)という意見を思い出した。今作でも、とある重要人物の内面は、おそらく意図的に伏せられていて、それが魅力につながっていく。「あなたは今幸せですか」、最後以外はどこだったかな?

異世界転生系の主人公を揶揄して「○○太郎」っていう文化がありますが、これ狂言で匿名の間抜けな主人公を表す「太郎冠者」なんかと全く同じ使い方ですよね。それこそ室町時代ぐらいからの言葉遣いが最新のネット界隈で継承されているのを見るのは日本人の無意識を見る思いで感動します。」