嘘の息子覚書控え

本家の控え

2019-07-20

ミステリーズ!」、vol.94。樋口有介の「うしろから歩いてくる微笑」が最終回。前作の『少女の時間』ほどぼんやりしていないタイトルの意味は何かと思ったら、最後の最後にそのものズバリが現れた。失踪と殺人と、事件の顛末はそれでいいのか。まあ、それでもいいのだろうけど、政治の話は趣味が悪かったかな。柚木草平にしては珍しく、どのヒロインにも深入りしないまま、ほのぼのローンまで失いそうで、シリーズ次作が読めるのは果たして何年先か。早く読めるといいな。

他でひとまず読んだのは、名取佐和子の「月と薔薇」。万博の月の石と、洋館の薔薇園と、そんな時代のそんな登場人物たちのミステリー。二重の離別の悲しみを、最後の段落が受け止めて、強く踏み出す。主人公以外で、ただ1人、葬式を悲しんだ御用聞きの正男が一服の清涼剤。作者の名前でウィキペディアを見ると……まずゲームシナリオライターなのか。イラストの尾崎智美、こちらはアニメのキャラクターデザイナー? コミティアに参加?

「そもそも「俺は優しい」という自己認識そのものが少し危ない。優しさとは主観的なものではなく、他人からそうジャッジされるべき客観的なものだ。」