嘘の息子覚書控え

本家の控え

2019-07-19

ジェイムズ・ヤッフェ『ママは何でも知っている』(早川書房)950円(本体922円)
訳は小尾芙佐
1977年7月31日初版、1996年6月30日第7版。安楽椅子探偵の系譜というあとがき、署名S・S。
語り手である主人公の刑事が、週末には妻と連れ立って、ブルックリンで一人暮らしをしているママの元を訪れ、食卓を囲みながら事件を話していくうちに、ママの機知が冴え渡る……という安楽椅子探偵ものの短編集。毎回、ママが奇妙な質問をして、実はそれが謎解きと密接な関係に……という辺りが独特の魅力を放っている。最後に収録されている、ママの結婚前夜に起こった事件の回想を読んでいると、古き良きアメリカ(と言っても、1940年代くらい?)はこういう雰囲気だったのだろうか……と想像。具体的には、¢90でレストランの食事ができる、とか。
このシリーズ、早川書房からは1冊きりのようだけど、東京創元社からは4冊出ているようなので、機会があったら続きを読んでみたい。故人である作者は、長い沈黙を破って、20年ぶりにママシリーズの続きを書いたのだそうで、どういう心境だったのかなあ。

「情報の”暴飲暴食”という表現は面白いから覚えておこう。」