嘘の息子覚書控え

本家の控え

2020-11-22

ふの付く某所より。
「ひい爺さんがオリンピックに出たことがあるらしいんだけど
国体の選手でもなんでもなく飛び入り参加したんだって
そんなオリンピックある?と思ったら昔のオリンピックは飛び入り参加OKだったのね…」
「>祭りだからな
第二回パリ五輪に出たらしいんだけど
調べると競技がいくつあったかも今もって不明なんだって
いつの間にか始まっていつの間にか終わってたって…」
「>オリンピックに出た事もすごいがその年代にパリにいた事もすごいような…
ひいじいさんは画家で肖像画を描いて生計を立ててた
ところが写真機が発明されて肖像画の仕事は激減
一念発起して絵の勉強のために花の都パリへ留学したけど何も得られず
やがてサロンで遊ぶばかりになり金が尽きて親戚に借金して帰ってきたそうな
パリで学んだこととしてポスターや広告の制作を始めたけどまもなく病気で死んじゃったみたい」
「ひい爺さんの日記によれば、当時のパリでは日本が空前のブームだったらしくて日本人ってだけでちやほやされたみたい
サロンのダンサーがパトロンになってくれて家賃も払わずに済んでたらしくはてはエスタンプ・モデルヌっていう雑誌の仕事をもらってたらしい」
「>写真はとっくの昔に発明されてるけど一般への普及度はどうだったか
ひい爺さんが描く肖像画ってのは金持ちが自分たちの姿を記録するために描かせてたんだって
要するに写真の代わりだよね…
写真が普及してくると絵でやる必要はなくなったというわけだ
ひい爺さんはこの事で絵で新しい表現や仕事が得られないかずいぶん悩んだ様子が日記に残っている」
「当時のパリではカンカンのダンサーっていうのが花形で売れっ子はめちゃくちゃ金持ちだったんだそうな
パリでは広告をイラストレーションで作るのが流行っててお金持ちのサロンやダンサーはこぞってお抱えの絵師をもって自分や店のポスターを描かせたそうな
当時のパリでは映画もブームで日本の様子を記録した映画が公開されて物珍しさから大ウケ
でも皆映画以外で日本を見たことがないのでひい爺さんが日本の話をするとみんな喜んで聞き、お金持ちのダンサーがパトロンになって仕事まで紹介してくれたっていうんだ
パリでの時間は充実してたようだけどパトロンのダンサーがロシアに嫁に行ってお金がなくなって帰ってきたみたい
パトロン頼みだったんだねー」
「ひい爺さんのフランス人のお絵描き仲間が放蕩三昧でアル中になってしまったという話があって、ひい爺さんだけじゃなくサロンの仲間みんなそんな感じだったんだなと思った
そのお絵描き仲間はアル中のせいで精神病院に入れられてしまいひい爺さんが身元引受人になるんだけど
最初ひい爺さんは引き取るのを嫌がったのでお絵描き仲間は自分がまだまともであることを証明するために病院の中で何枚も風景画や人物画を描いて送ってきたんだって
でも送られてきた絵が全部不気味なの
ピエロが真っ白い空間で転がってる絵とか寂しい空間で牛にまたがってる女サーカスとか」
「>波乱万丈で面白い人生だな「」のひいお爺さん
面白い話だけかいつまんで話したけど
友達の絵描きが小説の挿絵の仕事を得たことに対する嫉妬とか
でもその人の絵はめちゃくちゃ上手くてセンスがあるから凄いという羨望とか
面倒くさい絵師のヒみたいな事が書いてあった」
「ひい爺さんの友達が挿絵の仕事してた小説というのがclioという文芸の女神の名前を取った連続小説で神話などを元にしたオムニバス形式のものだったそうでいずれ日本の神話も、という話があってその時はひい爺さんにという事だったんだけど結局その仕事はこず
パリ生活後半はだらだらして過ごすが精神病院に入ってた友達が退院後実家で病死したのを機に自分もああなるのでは、死ぬなら日本で死にたい、とサロンや親戚に借金を頼んで帰ったらしい
そのあとはパリで学んだリトグラフで広告の仕事したりドライポイントやエッチングもやってみたと書いてあるけど何のことかは良くわからない
奥さんと子供ができたけど最後は結核で療養所に入って死んじゃったみたいだ」
「>>>ひいじいさんは帰国して無事印刷用の絵の仕事にありついたのか
>>チョコレートの包装とかクッキーの箱のパッケージ描く仕事してたんだって
>なるほど当時でも需要はありそうだ
あと日本に帰って念願の小説の挿絵の仕事も得たみたい
食道楽っていう小説の挿絵を描いたらしいんだけどどんな小説なのかは知らない
当時の小説は低俗な読み物とされていて家族にあきれられたと書かれているが本人は満足だったみたい
面白いエピソードはこんなところです

おしまい」
「>第2回五輪って事は1900年か…
>本当ならやっぱり万博とか行ったんだろうか
パリ万博の事も書いてある
ケツとおっぱいが異様にでかい女の見世物があって三回も見に行ってしまったとか興奮した様子で書いてあった」
嘘か真か、秋の夜話。

「たいていの人は、衣食住の心配がなくて、そこそこの知り合いと仲良くやってれば、おおむね幸せなんだよな、と、公園で楽しそうにしてる高校生たちを見てて、しみじみ感じたことがある」