嘘の息子覚書控え

本家の控え

2021-06-28

珈琲豆を買う途中、公園の横に古本の移動販売車を目撃……と、これは先週の話。人通りのない道だというのに、数本の幟を立てて、店主はのんびりと煙草をくゆらせていた。商品には日に焼けた物も多く、とうてい商売にはなりそうにもないけれど、無責任に傍から見ている分なら楽しそうでもあった。店主に話を聞いてみたかったが、横目で通り過ぎるだけ。

カクヨム連載から今期にアニメ化された『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』があったせいなのか、ふのつく某所で懐かしい話題。8年前に約6年前の回想、女子高生ではなく19才を拾ったであろう、おとぎ話。

「(エンジン・サマー)
ヒントはすべて語られていた。だからこその、終局で訪れる喪失感がハンパない。なんてこったよ、物語に耳を傾ける、ひいては本を読む、ってつまりこういう事だったのかよ。読了して、これほど「閉じる事」を躊躇う本は他にないんじゃなかろうか。図書館の棚から引っ張りだしたこの本が、また誰かの手で開かれる事を思うと、もうそれだけでたまらなくなる。語り手から語りが零れ落ち、それでもなお語られ続ける、残酷な、そしてこの上なく美しい、そんな話。とにかくすごかった。」