嘘の息子覚書控え

本家の控え

2022-08-24

文庫本の『八月の舟』をパラパラと。巻末を見ると、1990年にハードカバーで刊行されたものを1999年に文庫化、とある。20世紀中に読んだかどうかは定かでないとして、作中の年代を誤解してたことに気付いた。平成に入ってすぎに出た本だから、作中も同じく平成初期、あるいは昭和の末期の物語だろうと思っていたのが早とちり。実際はそれより20年ほど前、昭和40年代半ばの設定と、あちこちの文から推察できる。開始から10頁も進まない内に登場する「最近セブンスターってのが出たよ」という煙草の話題。終盤、いくつかのエピソードから、戦中に女学校へ通っていた人物が46歳だと判明して、ここでもおおよその西暦の見当がつく。現在に当てはめると、平成10年頃の話を書くようなもの、か。ウィキペディアを眺めると、樋口有介は高校に通っていたのか、いなかったのか、よく分からない。本来なら卒業済みだった年代を、あえて高校生の主人公で描いたのは、あるいは高校生活に複雑な感情でも抱いてたのだろうか。

「中学生男子が恥ずかしそうにエロ本を買いに来るのを楽しみにしてたのに最近はエロ本もエロ本を求める男子も減ったと近所の本屋のおばちゃんが言ってたもん」